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執筆者の写真小森智文

成年後見制度の使い勝手

 昨年から、成年後見候補者を積極的に引き受けるようになり、今月もご相談を受けました。

ご両親が他界されてしまい、必要に迫られた施設からのご相談でした。

 認知症高齢者や知的・精神障害者等を含めれば、統計で1,000万人程度は、成年後見制度を利用した方が良いだろうと言われる人がいるにも関わらず、実際の利用者は24万人にしかいません。

 政府としては第二期成年後見制度利用促進計画を立てて、少しでも利用しやすくということを考えているのでしょうが、私は兄の成年後見人を17年務めていて、第一期利用促進計画があったことさえ知らなかったというのが実情です。


 やはり、一番の問題点は、成年後見人の選任の不透明さだと思います。

 成年後見が必要な方のことを知っている親族や、私のことを信頼し、私に候補者を依頼したとしても、必ずしも、選任されるかどうか分からず、いきなり弁護士や司法書士の専門家が選任されるというのは、一種の博打的な要素が高いと言わざるを得ません。

 そして、その専門職と呼ばれる方々の中でも、ニュースに取り上げられるような事例では、本人や家族のことを全く配慮していない事例が目立ちます。後見人は単に金銭管理だけを行うのではなく、本人にとって最良なことは何かを家族や福祉関係者とともに考えるべきだと思います。そして、大変だとは思いますが、これまで本人を一番サポートしてきた家族との信頼関係を構築することが大切だと思います。

 

 次に、成年後見等が申立を行えるのが四親等以内の親族等に限られ、本人に判断能力がない場合は、親族申立を行う必要性があり、その申立を行う場合の費用負担が、本人に財産があったとしても、基本的には申立人が支払わなければならないというのは、誰も納得できないことだと思います。本人に資力があれば、申立費用は本人負担にすべきです。

 

 そして、成年後見人の報酬額についても、明確な基準がないことが、申立を躊躇する要因でもあると思います。私は、この5月に報酬付与の審判を3件同時に申立を行いました。一人目は施設入所で預貯金ありの被成年後見人、二人目は自宅独居で預貯金ありの被成年後見人、三人目は自宅独居で生活保護受給者の被補助人という、それぞれ支援が違うにも関わらず、裁判所の報酬額はほぼ横並びで、どのような基準があるのか、支援を行っている側の私でさえ分からない状況です。

 それぞれ支援の内容や頻度も違うにも関わらず、それをどうやって判断しているのかをもっと明確化するような報告書の内容に変更すべきだと思います。

 

 現在の24万人程度で、専門職の業務が手一杯になってしまっている現状で、今のような運用方法では限界ですので、積極的に親族後見を認める、また、裁判所が専門職として認めている弁護士、司法書士、介護福祉士の三士業以外の国家資格者も専門職として登用するということも検討すべきだと考えます。


 親なきあとの対策としては、私は成年後見制度は必要なものだと思っています。現在、見直しが検討されていますが、単に小手先だけの対策ではなく、安心して利用したり、任せられたりするような制度にしていただきたいと考えます。

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